土地改良区の決済金とは?農地を宅地や駐車場に転用するときに必要な費用を解説

農地を売却したり、住宅を建てたり、駐車場や資材置場などに転用したりする際に、

「土地改良区の決済金が必要です」

と言われることがあります。

「土地改良区とは何なのか?」

「なぜ農地を転用するだけでお金を支払う必要があるのか?」

「決済金はいくらくらいかかるのか?」

と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、農地転用や土地売買に関係する土地改良区の決済金について、できるだけ分かりやすく解説します。

1.土地改良区とは?

土地改良区とは、農業用水路や排水路、農道などの農業生産に必要な施設を整備・維持管理するために設立された法人です。

土地改良事業を行っている地域では、農地の所有者などが組合員となり、事業費や維持管理費などを賦課金として負担しています。

例えば、

・農業用水路の維持管理
・排水施設の維持管理
・農道の整備
・土地改良施設の修繕
・土地改良事業に伴う借入金の償還

などの費用が土地改良区の運営に関係しています。

土地改良区の区域内にある農地を転用すると、その農地は農業用水路などの施設を利用する「受益地」から外れることがあります。

そこで問題になるのが「決済金」です。

2.土地改良区の決済金とは?

簡単にいうと、土地改良区の決済金とは、

農地を転用して土地改良区の地区から除外するときに、それまでその農地が負担することになっていた将来の負担などを清算するために支払うお金

です。

土地改良法第42条第2項では、土地改良区の組合員が、その資格に係る土地について組合員としての資格を失い、権利義務の承継等がない場合には、土地改良区との間で必要な決済をすることが定められています。

農林水産省も、土地改良区の地区から農地を除外する場合には、将来の維持管理費などを含めて決済する仕組みについて説明しています。

3.なぜ決済金を支払う必要があるの?

例えば、100人の農家が利用している農業用水路があるとします。

この水路の維持管理費が毎年100万円かかっているとすると、単純化すれば1人あたり年間1万円の負担です。

ところが、そのうち10人が農地を宅地などに転用して土地改良区から抜けると、残った90人で維持管理費を負担することになります。

すると、残った農家の負担が増えてしまいます。

そこで、転用する農地について、将来の維持管理費や土地改良事業に関する負担などを一定の方法で清算します。

これが決済金の基本的な考え方です。

つまり、

「自分が土地改良区から抜けることで、残った組合員に負担が偏らないようにするための清算」

と考えると分かりやすいでしょう。

実際に、土地改良区の決済金について「将来支払うべき賦課金を一括してまとめて支払う」と説明している土地改良区もあります。

4.どんなときに決済金が必要になる?

代表的なのは、農地を農地以外の用途に変更する場合です。

例えば、

・農地に住宅を建てる
・農地を駐車場にする
・農地を資材置場にする
・農地を店舗用地にする
・農地を工場用地にする
・農地を道路用地にする

といったケースです。

土地改良区の区域内にある農地を転用する場合、土地改良区への届出や地区除外の手続きとともに、決済金の納付が必要となることがあります。自治体でも、農地転用に際して土地改良区への申出と決済金の納付が必要になる旨を案内しています。

また、公共事業によって農地が道路や河川などの用地として買収される場合にも、決済金が必要になることがあります。

5.決済金はいくらかかる?

ここは非常に重要なポイントです。

決済金には全国一律の金額が決められているわけではありません。

土地改良区ごとに規程や算定方法が定められているため、同じ面積の農地でも、土地改良区によって金額が異なることがあります。

例えば、ある土地改良区では「1㎡当たり○円」という形で決済金を定めています。

一方で、単純な面積だけではなく、

・土地改良事業の償還金
・将来の維持管理費
・賦課金
・土地改良施設に関する負担
・その他の土地改良事業に関する費用

などを考慮して算定される場合もあります。

農林水産省の資料でも、地区除外決済金について、残りの農地の組合員に過重な負担が生じないよう、将来の維持管理費等を考慮して算定する考え方が示されています。

そのため、

「100㎡だから決済金はいくら」

と全国一律に判断することはできません。

実際の金額については、その土地が所属している土地改良区に確認する必要があります。

6.農地転用の許可とは別の手続きです

注意していただきたいのが、土地改良区の手続きと農地法上の手続きは別物だということです。

例えば、農地を住宅用地にする場合には、農地法上の農地転用許可または届出が必要になることがあります。

一方、その農地が土地改良区の区域内にある場合には、

農地転用の手続き+土地改良区の地区除外・決済手続き

が必要になる場合があります。

土地改良区から「意見書」などの書類を取得して農地転用の手続きを進めるケースもあります。自治体の案内でも、土地改良区への申出と決済金の納付を確認した上で意見書を交付する仕組みが紹介されています。

したがって、農地を転用する場合には、

「農業委員会に申請すれば終わり」

とは限りません。

7.土地を売る場合にも決済金が問題になることがあります

農地を売却する場合にも注意が必要です。

特に、

「農地を売って、買主が住宅や駐車場として利用する」

というケースです。

この場合、売買契約だけでなく、農地転用や土地改良区の地区除外など、複数の手続きが関係してきます。

また、売主と買主のどちらが決済金を負担するのかについては、契約前に確認しておくことが重要です。

後になって、

「土地代とは別に決済金が何十万円も必要だった」

ということになると、売主・買主の間でトラブルになる可能性があります。

そのため、農地を売買する場合には、契約前の段階で土地改良区に決済金の有無と金額を確認しておくことをおすすめします。

8.決済金と未納の賦課金は別物です

「決済金」と「過去の賦課金の未納」は同じものではありません。

例えば、過去の年度の賦課金を滞納している場合には、その未納分についても清算が必要になることがあります。

一方、農地転用に伴う決済金は、将来の維持管理費など、その土地が土地改良区から除外されることによって生じる権利義務の清算という意味合いがあります。

国税庁も、農地転用決済金について、過年度の未納賦課金とは区別して取り扱っています。

したがって、

「決済金を払えば、過去の未納賦課金も全部なくなる」

という意味ではありません。

9.決済金を払えば農地転用できるの?

ここも誤解しやすいところです。

土地改良区に決済金を支払ったからといって、それだけで農地転用ができるわけではありません。

農地転用には、農地法に基づく許可・届出などの手続きが別途必要です。

また、農振農用地区域に指定されている農地の場合には、農振除外の問題が生じることもあります。

つまり、

土地改良区の決済金
↓
農地転用許可

という単純な関係ではありません。

農地転用では、

  1. 農振法上の手続きの確認
  2. 農地法上の転用許可・届出の確認
  3. 土地改良区への届出・地区除外手続き
  4. 決済金の確認・納付
  5. 必要に応じてその他の関係機関との協議

などを総合的に確認する必要があります。

10.決済金は「余計な費用」ではなく、土地改良区から抜けるための清算金

決済金を初めて聞いた方からすると、

「農地を転用するだけなのに、なぜこんな費用がかかるの?」

と思われるかもしれません。

しかし、決済金は単なる手数料というよりも、

土地改良区の受益地から外れることに伴う権利義務の清算

という意味合いがあります。

農地を転用することで、その土地は農業用水路などの土地改良施設を利用する農地ではなくなります。

その一方で、残された農地の所有者が従来と同じ施設を維持していかなければなりません。

そこで、転用する土地について将来の負担などを清算し、残された組合員に負担が偏らないようにするのが決済金の重要な役割です。

11.農地を購入・売却するときは「土地改良区」を確認しましょう

農地を売却したり購入したりする場合には、登記簿や公図だけを確認すれば十分とは限りません。

特に農地の場合には、

「この土地はどの土地改良区に属しているのか?」

「決済金は必要なのか?」

「決済金はいくらなのか?」

「過去の賦課金に未納はないか?」

「地区除外の手続きは必要なのか?」

などを事前に確認しておくことが重要です。

決済金は土地改良区によって計算方法や金額が異なるため、具体的な金額については、対象土地を管轄する土地改良区への確認が必要です。

まとめ

土地改良区の決済金とは、農地を転用するなどして土地改良区の地区から除外する際に、土地改良区との間の権利義務を清算するために支払うお金です。

特に、

「農地を宅地にしたい」
「農地を駐車場にしたい」
「農地を資材置場にしたい」
「農地を売却したい」

という場合には、土地改良区の区域に入っているかを早めに確認することが大切です。

農地転用は、農地法だけでなく、農振法、土地改良区など複数の制度が関係することがあります。

「この土地は転用できるのか?」

「決済金はいくらかかるのか?」

「売買契約の前に何を確認すればよいのか?」

といった疑問がある場合には、早い段階で専門家に相談することで、後から思わぬ費用や手続きが発生することを防ぎやすくなります。

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