皆様は「土地改良区」という団体をご存じでしょうか?
農地を所有している方や、農地を購入して住宅・駐車場・資材置場などとして利用しようと考えている方にとって、土地改良区は重要な存在です。
農地転用のご相談を受けていると、
「農地転用の許可申請以外にも手続きが必要なのですか?」
「土地改良区から決済金を請求されましたが、これは何のお金ですか?」
「農地転用をするだけなのに、なぜ高額な費用がかかるのでしょうか?」
といったご質問をいただくことがあります。
実は、農地転用を行う場合、農地法の許可申請や届出だけでなく、土地改良区に対する手続きや決済金の支払いが必要になることがあります。
今回は、農地転用と土地改良区の関係、決済金が必要になる理由、手続きの際に注意したいポイントについて、行政書士が分かりやすく解説します。
1.土地改良区とは?
土地改良区とは、土地改良法に基づいて設立され、農業用の用水路や排水路、農道などの施設の整備・維持管理を行う団体です。
農業を行うためには、農地そのものだけでなく、農業用水を確保するための水路や、雨水などを排出するための排水施設が必要です。
また、地域によっては、ポンプ場やため池などの施設も重要な役割を果たしています。
こうした施設の整備や維持管理には、当然ながら費用がかかります。
そのため、土地改良区では、区域内の農地などを対象として賦課金を徴収し、施設の維持管理や土地改良事業に必要な費用に充てています。
土地改良区は、農業を支える重要な役割を担っているのです。
2.なぜ農地転用で土地改良区の手続きが必要になるの?
例えば、田んぼを住宅用地や駐車場、資材置場などに変更する場合を考えてみましょう。
その土地が土地改良区の区域内にある場合、農業用水路や排水路などの維持管理に関係する手続きが必要になることがあります。
土地改良区によって具体的な手続きは異なりますが、農地転用に伴い、転用の通知や地区除外に関する申請、意見書の交付申請などを求められる場合があります。
例えば、亀田郷土地改良区でも、農地転用等に関する手続きや、農道・用排水路を農業以外の目的で使用する場合の申請手続きが案内されています。
土地改良区の区域内にある農地を転用する場合には、農地法の手続きだけでなく、土地改良区への確認も必要です。
ここで注意したいのは、農地転用の許可を受ければ、土地改良区に関する手続きもすべて完了するわけではないということです。
農地法の許可・届出と、土地改良区に関する手続きは、それぞれ確認する必要があります。
3.土地改良区の「決済金」とは?
農地転用の際に問題となるのが、土地改良区に支払う「決済金」です。
土地改良法第42条第2項では、土地改良区の組合員が組合員としての資格を失い、権利義務の承継などがない場合、その土地に関する土地改良区の事業上の権利義務について、必要な決済を行うことが定められています。
この規定などを根拠として、土地改良区の規程に基づき、農地転用に伴う決済金が徴収される場合があります。
では、なぜ決済金が必要なのでしょうか。
農地が減っても、水路などの維持管理費は簡単には減らない
例えば、ある地域で10人の農地所有者が農業用水路を利用しているとします。
そのうち3人が農地を宅地に転用し、農業用水路を農業目的で利用しなくなったとしましょう。
農地が10人分から7人分に減ったとしても、水路や排水ポンプなどの維持管理費が、それに比例して30%減るとは限りません。
施設の維持管理や補修、過去の土地改良事業に関する負担など、農地が減っても必要となる費用があるためです。
転用した人が何も負担しなければ、残った農地の所有者や耕作者の負担が重くなる可能性があります。
そこで、農地転用に伴って受益地が減少する場合などに、土地改良区の規程に従って決済金を徴収し、負担の公平を図る仕組みが設けられています。
つまり、決済金は単なる事務手数料ではありません。
農業用施設の維持管理や土地改良事業に関する将来の負担などを踏まえて、土地改良区の規程に基づき精算するためのお金ということです。
4.決済金はいくらかかるの?
決済金の金額は、すべての土地改良区で一律に決まっているわけではありません。
土地改良区ごとに算定基準が異なり、転用する土地の種類や面積、地域などによって金額が変わる場合があります。
また、年度によって単価が改定されることもあります。
例えば、亀田郷土地改良区では、農地転用決済金などの単価を公表しています。令和8年度分についても、2026年4月1日に単価の公表が行われています。
そのため、以前の資料やインターネット上の記事に記載されている金額を、そのまま現在の決済金として扱うことは避けましょう。
実際に農地転用を行う際には、対象地を管轄する土地改良区に、最新の単価と決済金の見積額を確認することが大切です。
決済金は土地の面積によっては大きな金額になることもあります。農地を購入する場合や、農地を転用して事業用地にする場合には、計画の早い段階で確認しておくことをおすすめします。
5.田を畑に変更する場合にも注意が必要
土地を宅地や駐車場などに転用する場合だけでなく、田を畑に変更する場合にも注意が必要です。
土地改良区によっては、田から畑への変更など、農地間の地目変更に関しても所定の手続きや決済金が必要となる場合があります。
例えば、亀田郷土地改良区では、田から畑、畑から田への変更に関する手続きが案内されています。
ただし、土地改良区における手続きと、登記簿上の地目変更登記は別のものです。
また、田を畑として利用する場合と、田を宅地や資材置場などの農地以外の用途に変更する場合では、必要となる手続きが異なります。
「田を畑にするだけだから手続きは不要だろう」と自己判断せず、土地改良区と関係機関に確認しましょう。
6.土地改良区の手続きは、農地転用の前に確認しましょう
農地を転用する場合には、土地改良区への手続きだけでなく、農地法や都市計画法など、ほかの制度との関係も確認する必要があります。
例えば、農地を住宅用地にする場合、次のような事項を確認することがあります。
- 農地法第4条または第5条の許可・届出が必要か
- 農業振興地域の農用地区域に該当していないか
- 市街化調整区域など、都市計画上の制限がないか
- 開発許可など、ほかの許認可が必要か
- 土地改良区の区域内にあるか
- 決済金や地区除外などの手続きが必要か
- 用水路・排水路・農道などの使用に関する手続きが必要か
これらは土地の所在地や転用目的によって異なります。
特に、土地を購入して住宅や事業用施設を建築する予定の場合には、購入契約を締結する前に確認することが重要です。
農地転用の許可が得られるかどうかだけでなく、土地改良区の手続きや決済金、造成費用なども含めて、計画全体を検討する必要があります。
7.当事務所にご相談いただくメリット
農地転用の手続きは、農地法の申請書を作成して提出すれば終わり、というものではありません。
土地の状況によっては、農振除外、開発許可、土地改良区への手続き、測量・分筆、地目変更登記など、複数の手続きが関係することがあります。
これらを個別に調べて進めると、時間がかかるだけでなく、後から追加の手続きや費用が判明することもあります。
当事務所では、農地転用のご相談に際して、土地の所在地や利用目的などを確認し、必要となる手続きの整理をお手伝いしています。
また、司法書士業務とも連携できる体制を活かし、農地転用後の登記など、関連する手続きについてもご相談いただけます。
農地転用を検討されている方は、できるだけ早い段階でご相談ください。
まとめ|農地転用では土地改良区と決済金の確認も忘れずに
土地改良区は、農業用水路や排水路など、農業に欠かせない施設を維持管理する重要な団体です。
そのため、土地改良区の区域内にある農地を転用する場合には、農地法の許可・届出とは別に、土地改良区への手続きや決済金の支払いが必要になることがあります。
決済金の金額や手続きは、土地改良区や土地の状況によって異なります。
農地転用を検討している方は、次の点を確認しておきましょう。
- 土地がどの土地改良区の区域内にあるか
- 転用に伴う届出や地区除外の手続きが必要か
- 決済金はいくらになるか
- 用水路・排水路・農道などの使用に関する手続きが必要か
- 農地転用以外に必要な許認可や登記があるか
農地転用の計画を具体化する前に、これらを確認しておくことで、予想外の費用や手続きによるトラブルを防ぎやすくなります。
新潟市及び新潟市近郊で農地転用をご検討の方へ
トラスト行政書士事務所では、農地転用に関する許可申請や届出をはじめ、関連する手続きについてご相談を承っています。
「この農地は転用できるのか知りたい」
「土地改良区の決済金がいくらになるのか確認したい」
「農地を購入する前に、必要な手続きや費用を把握しておきたい」
このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
農地転用は、許可の可能性だけでなく、関連する手続きや費用を事前に把握することが大切です。
安心して土地の活用計画を進められるよう、早めの確認をおすすめします。
亀田郷土地改良区の決済金は以下のとおりです。
10アールあたり
| 田 | 624,000円 | |
| 畑 | 156,000円 | |
| 地目変更 | 468,000円 |



