耕作放棄地とは、「以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地」とされております。要するに数年間耕作されず、草木に覆われて見た目では「農地」とは言えないような土地です。
農家の高齢化、後継者不足により年々この「耕作放棄地」が増加しているのが現状です。
では、このような耕作放棄地は数年間「農地」としての役割を果たしていないことから農地法の適用を受けず、他人への売却や地目変更も可能となるのでしょうか。
私が実際によく受ける依頼なのですが、市街化調整区域内の田や畑を数年間放置しているという状況で「もう農地として使っていないので雑種地に地目変更してください」というもの。これは、地目変更することができません。もしできるとすれば、意図的に耕作放棄地をつくり出すことによって農地法の適用を免れるという事が可能になります。よって、耕作放棄地であるからと言っても基本的には、現状農地である土地と同様に手続きが必要になります。
繰り返しますが、現に耕作されていない土地でも過去に農地であり、登記記録上の地目が「田」「畑」である場合は、簡単に地目変更することはできず、農業委員会で農地転用の手続きが必要になります。
以下の場合には、農地転用の許可を受けずに地目変更できる場合があります。
1 | 旧農地調整法の第2次改正(昭和21年11月22日)以前から農地でなくなっている土地 |
2 | 森林化や原野化(表土が流出し岩石が露出しているなど)による農地の荒廃が著しく、開墾に匹敵するような条件整備を行わなければ農地として利用できない土地 |
3 | 周囲の土地(山林など)からの直接的な影響(雑木の根、種子、土砂、水などの自然的な障害、日照などの気象的な障害などの悪影響)によって、農地としての維持や継続的な利用が困難な土地 |
現在、住宅が建っている底地の地目が「田」「畑」というのは、よくあることです。不動産登記法においては地目変更した場合の登記申請義務が規定されていますが、実際には、多くの土地の現状と登記上の地目が相違しているということになります。
住宅を建てる場合に、金融機関から融資を受けるには、地目を変更することが必要になりますが、融資を受けない場合は、農業委員会での農地転用の手続きはしているが、地目変更をせず現在まで経過しているということなのでしょう。地目が変更されていないという事は、無断転用ではなく、農地転用の手続きはしているが、「地目変更」をしていないというケースがほとんどです。