農地法第4条と第5条の違いを わかりやすく解説

農地転用の手続きを調べていると必ず出てくる「農地法第4条」と「第5条」。
どちらも農地転用に関する条文ですが、申請者が誰か・権利移転があるかどうかによって使い分けが変わります。

本記事では具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。

目次
1農地法第4条・第5条の基本的な違い(一覧)
2農地法第4条とは?自分の農地を自分で転用する場合
3農地法第5条とは?売買・賃貸を伴う転用の場合
4どちらに該当するか判断するフローチャート
5具体的な事例で確認する
6手続きの流れの違い
7必要書類の違い
8よくある間違い・注意点
9よくある質問

基本の違い
1. 農地法第4条・第5条の基本的な違い
まず最も重要な違いである「権利移転があるかどうか」を確認しましょう。
農地法 第4条
自分の農地を
自分で転用する
権利移転 なし(所有者そのまま)
申請者 農地の所有者のみ
目的 自己使用(住宅・駐車場等)
根拠条文 農地法第4条第1項

農地法 第5条
農地を売買・賃貸して
転用する
権利移転 あり(売買・賃貸借等)
申請者 売主と買主(または貸主と借主)の連名
目的 転用目的での売買・賃貸
根拠条文 農地法第5条第1項
一言で覚えるポイント:「所有者が自分で使うなら4条、人に売る・貸すなら5条」と覚えると判断しやすくなります。

農地法第4条
2. 農地法第4条とは?
農地法第4条は、農地の所有者が自分の農地を農業以外の目的に転用する場合に適用される条文です。農地の所有権は移転せず、所有者がそのまま農地を別の用途に使うケースが対象です。

例えば、代々所有している自己所有の田に自分の家を建てたい、畑を月極駐車場として使いたい、といった場面で農地法第4条の申請(または届出)が必要になります。

申請するのは農地の所有者のみで、単独で申請できる点がシンプルです。
第4条 該当例
自分の田に自宅を建てる
所有者Aさんが自分名義の農地に、自己使用の住宅を建築したい場合。所有権の移転はなし。
申請者:Aさん(所有者)のみ
第4条 該当例
自分の畑を駐車場にする
所有者Bさんが自分名義の農地を月極駐車場として経営したい場合。所有権の移転はなし。
申請者:Bさん(所有者)のみ
第4条 該当例
自分の農地に太陽光パネルを設置
所有者Cさんが自分名義の農地に、野立ての太陽光発電設備を設置したい場合。
申請者:Cさん(所有者)のみ
第4条 該当例
自分の農地に農業用倉庫を建てる
所有者Dさんが農機具保管用の倉庫を自分の農地に建築したい場合(農業関連施設)。
申請者:Dさん(所有者)のみ

農地法第5条
3. 農地法第5条とは?

農地法第5条は、農地を転用する目的で売買・賃貸借・使用貸借などの権利移転・設定を行う場合に適用される条文です。「誰かに売る・貸す」という行為と「転用する」という行為が同時に発生する点が第4条との大きな違いです。
「貸す」場合は、所有者が変わらないので4条と勘違いしやすいですが5条になります。

申請は権利を設定・移転する者(売主・貸主)と権利を取得する者(買主・借主)の連名で行うことが原則です。例えば、不動産会社が農地を購入して宅地開発するケースや、建設会社が農地を借りて資材置き場にするケースが該当します。

第5条 該当例
農地を不動産会社に売却・宅地化
所有者Aさんが農地を不動産会社Bに売り、B社が住宅地として開発する場合。所有権移転あり。
申請者:Aさん(売主)+B社(買主)の連名
第5条 該当例
農地を借りて太陽光発電を設置
所有者Aさんから農地を借りたC社が、その農地に太陽光発電設備を設置する場合。賃借権設定あり。
申請者:Aさん(貸主)+C社(借主)の連名
第5条 該当例
農地を購入して駐車場経営
個人DさんがAさんの農地を購入し、コインパーキングとして経営する場合。所有権移転あり。
申請者:Aさん(売主)+Dさん(買主)の連名
第5条 該当例
農地を相続人以外に遺贈・転用
農地の所有者が特定の第三者に農地を遺贈し、その第三者が転用目的で取得する場合。
申請者:遺贈者(または遺言執行者)+受遺者

判断方法
4. どちらに該当するか判断するフローチャート

自分のケースがどちらに当たるかは、以下の順番で判断できます。
Q1
農地の所有者は誰ですか?
自分(申請者)が所有している → Q2へ
他人が所有している(購入・賃借する)→ 第5条
Q2
転用後に農地の所有権は移転しますか?
所有権はそのまま自分のまま → 第4条
誰かに売る・貸す → 第5条
補
市街化区域内の農地は、許可申請ではなく農業委員会への届出で転用できます(第4条・第5条ともに)。ただし届出の提出先・様式は同じく農業委員会です。

詳細比較
5. 手続き・書類の主な違い

比較項目 第4条(自己転用) 第5条(権利移転伴う転用)
申請者 所有者のみ(単独申請) 売主・貸主と買主・借主の連名
権利移転 なし あり(売買・賃借・使用貸借等)
申請先 農業委員会(都道府県知事等) 農業委員会(都道府県知事等)
許可または届出 市街化区域:届出 / それ以外:許可 市街化区域:届出 / それ以外:許可
追加書類 基本書類のみ 売買契約書・賃貸借契約書・登記事項証明書等が追加で必要
農地法3条との関係 関係なし 農地法3条許可(農業目的の権利移転)とは別手続き
よくある事例 自宅建築・駐車場・太陽光(自己所有) 農地売却・農地賃貸・開発業者への転売

手続きの流れ
6. 申請の流れの違い

農地法第4条(自己転用)の流れ
1
農地区分の確認
農業委員会または役所で、農地が市街化区域・農振農用地(青地)・その他のどれに当たるかを確認する。
2
申請書類の準備
農地転用許可申請書(4条様式)・位置図・公図・登記事項証明書・建築計画書等を準備する。
3
農業委員会へ申請(または届出)
市街化区域は届出のみ(1〜2週間で受理)。それ以外は許可申請(標準1.5〜2ヶ月)。
4
許可書の受領・工事開始
許可書(または受理通知書)を受領後、転用工事を開始できる。
5
工事完了報告・地目変更
工事完了後に農業委員会へ完了報告書を提出。その後、法務局で地目変更登記を行う。
農地法第5条(権利移転伴う転用)の流れ
1
農地区分・当事者の確認
農地区分の確認に加え、売主・買主(または貸主・借主)双方の情報・実印・印鑑証明を準備する。
2
申請書類の準備(追加書類あり)
農地転用許可申請書(5条様式)に加え、売買契約書・賃貸借契約書・双方の登記事項証明書・印鑑証明書等が必要。
3
農業委員会へ連名で申請(または届出)
売主と買主が連名で申請書に押印して提出。代理人(行政書士等)が申請することも可能。
4
許可書受領・所有権移転登記
許可書を受領後、所有権移転登記(または賃借権設定登記)を行い、転用工事を開始できる。
5
工事完了報告・地目変更
工事完了後に農業委員会へ完了報告書を提出し、地目変更登記(法務局)を行う。
注意:第5条の場合、許可が下りる前に所有権移転登記を行うことは原則できません。許可書の受領後に登記手続きを進めましょう。

よくある間違い
7. よくある間違い・注意点

「自分の農地だから4条」とは限らない 自分の農地でも、誰かに売って転用させる場合は第5条になります。「誰が転用後に使うか」がポイントです。
許可前に契約・工事を始めてはいけない 農地転用許可が下りる前に売買契約を履行したり工事を始めたりすることは農地法違反です。最悪の場合、原状回復命令・罰金・懲役の対象になります。
!農地法第3条と第5条は全くの別物 農地法第3条は「農業目的のまま権利移転する場合(農家同士の売買等)」の条文で、転用を伴わない場合に適用されます。転用が伴う権利移転は第5条です。
!登記上の地目が「宅地」でも農地扱いになる場合がある 登記地目ではなく「現況(実際に耕作に使われているか)」で農地かどうかが判断されます。見た目が農地なら農地として扱われます。

よくある質問
8. Q&A

Q. 親から相続した農地に家を建てたい。4条?5条?
相続は農地法の許可不要で所有権が移転するため、農地はすでに自分のものです。その農地に自分で家を建てるなら第4条の申請(または届出)が必要です。
Q. 農地を売って買主が駐車場にする場合は?
売却(所有権移転)と転用(農地以外の用途での利用)が同時に発生するため第5条になります。売主と買主が連名で申請します。
Q. 農地を自分で転用した後、第三者に売る場合はどうなる?
第4条で転用許可を得て地目変更が完了した後(宅地等になった後)の売買は、すでに農地ではないため農地法の規制は受けません。通常の不動産売買として手続きできます。
Q. 4条・5条ともに市街化区域なら届出だけでよいか?
はい、市街化区域内の農地転用は許可申請ではなく届出で済みます(4条・5条ともに)。届出から受理まで通常1〜2週間程度です。ただし農振農用地(青地)の場合は別途農振除外の手続きが必要です。
Q. 行政書士に頼む場合、費用の相場は?
届出の場合は5万円程度、許可申請の場合は10万円程度が相場です。第5条で売主・買主双方の書類が必要な場合や、農振除外が伴う場合はさらに費用・期間がかかります。
まとめ
農地法第4条と第5条の違いは、「権利移転(売買・賃貸)があるかどうか」の一点です。

自分の農地を自分で転用する → 第4条
農地を売る・貸すことと転用が同時に発生する → 第5条

どちらの場合も、許可(または届出)が下りる前に工事や登記を行うことは農地法違反になります。特に売買を伴う第5条のケースは書類が多く、許可のタイミングと登記のタイミングの調整が重要です。不安な場合は農業委員会への事前相談や、行政書士への依頼をご検討ください。

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