農地を住宅用地や駐車場、資材置場などに転用する場合、農地法に基づく許可申請や届出が必要になります。
この農地転用の手続きを主に担当するのが行政書士です。
しかし、農地転用を進める際には、申請書類を作成するだけでは対応できないケースがあります。土地の境界がはっきりしていない場合や、農地の一部だけを転用したい場合、転用後に土地の地目を変更する場合などです。
こうした場面で重要な役割を果たすのが、土地家屋調査士です。
土地家屋調査士は、土地や建物の物理的な状況を調査・測量し、表示に関する登記を専門に扱う国家資格者です。農地転用に関連して、主に「確定測量」「分筆」「地目変更」などの業務を行います。
今回は、農地転用と土地家屋調査士の関係について、実際の手続きで問題になりやすいポイントも含めて解説します。
1.農地転用に土地家屋調査士が関わるのはなぜ?
農地転用では、農地をどのような用途に変更するのか、転用後にどのように利用するのかを明らかにする必要があります。
例えば、次のようなケースです。
- 農地を転用して住宅を建築する
- 農地の一部を駐車場にする
- 農地を資材置場や事業用地として利用する
- 農地を売却するため、土地を分ける
- 転用が完了した土地について、登記簿上の地目を変更する
こうした手続きでは、対象となる土地の位置や面積、境界、転用する範囲などを正確に把握することが重要になります。
ところが、農地の場合、登記簿や公図などの資料だけでは、実際の境界や土地の形状を正確に判断できないことがあります。
特に、長年にわたって農地として利用されてきた土地では、境界標が見当たらなかったり、隣接地との境界が曖昧になっていたりすることもあります。
また、土地全体ではなく、その一部分だけを転用する場合には、転用する範囲を明確にしなければなりません。
このようなときに、土地の調査や測量、必要な登記を専門的に行う土地家屋調査士が必要になるのです。
ただし、農地転用を行うすべてのケースで、確定測量や分筆が必要になるわけではありません。土地の状況や転用計画、申請先の取扱いなどによって、必要な業務は異なります。

2.農地転用で重要になる「確定測量」とは?
農地転用に関連する土地家屋調査士の業務のうち、特に重要なのが確定測量です。
確定測量とは、土地の境界について、隣接する土地の所有者や道路・水路などを管理する官公署との確認・協議を行い、境界を確定していくための測量です。
一般的には、資料調査、現地測量、境界の確認、必要な協議、図面作成などを進めます。
なぜ農地では境界の確認が難しいのか?
住宅地では、境界標が設置されていたり、過去に測量が行われていたりすることがあります。
一方、農地では、長年にわたって耕作が続けられているものの、境界標が見当たらない、境界を示す資料が十分に残っていない、といったケースがあります。
例えば、隣接する農地との間に畦畔があったとしても、その畦畔のどこが法的な境界なのか、見た目だけでは判断できないことがあります。
また、昔からの土地の利用状況と、登記簿や地図などの資料が一致していない場合もあります。
そのため、現地を見て「このあたりが境界だろう」と判断するだけでは不十分です。
法務局に備え付けられた地図や地積測量図、登記情報などを確認し、現地の状況と照らし合わせながら、境界を慎重に調査していく必要があります。
確定測量では、どのような作業を行うのか?
確定測量では、主に次のような作業を行います。
① 法務局や役所などで資料を収集する
まず、登記事項証明書、公図、地積測量図などの資料を調査します。
必要に応じて、市役所などで道路や水路に関する資料を確認し、土地改良区などの関係機関への確認・協議を行うこともあります。
こうした資料調査は、境界を検討するための重要な基礎になります。
② 現地の状況を調査する
実際に現地へ赴き、土地の形状、既存の境界標、畦畔、道路、水路、隣接地との位置関係などを確認します。
農地では、草木が生い茂っていたり、土地の高低差があったりすることもあります。現地の状況を正確に把握するには、季節や土地の利用状況にも配慮しながら調査を進める必要があります。
③ 測量を行い、図面を作成する
トータルステーションなどの測量機器を使用して現地を測量し、測量結果をもとに図面を作成します。
土地の形状や既存資料との整合性を確認し、境界を検討するための資料を整えていきます。
④ 隣接地の所有者などと境界を確認する
確定測量で特に時間と労力がかかることがあるのが、隣接地の所有者などとの境界確認です。
隣接する土地の所有者に立ち会いを依頼し、資料や現地の状況をもとに境界を確認していきます。
道路や水路などが関係する場合には、その管理者である官公署との協議が必要になることもあります。
境界について双方の認識が異なる場合には、資料を確認しながら慎重に話し合いを進めなければなりません。
このように、確定測量は単に機械で土地の面積を測るだけの仕事ではありません。資料調査、測量、関係者との調整を積み重ねていく業務なのです。
3.確定測量で最も大変なのは、境界の確認と関係者との調整
私たちが農地転用の相談を受ける際、土地の境界が明確でないことが、手続きを進めるうえでの課題になる場合があります。
土地家屋調査士の仕事で難しいのは、測量そのものだけではありません。
隣接地の所有者などに境界を確認してもらうためには、それぞれの都合に合わせて日程を調整し、現地で説明を行う必要があります。
土地の所有者が遠方に住んでいる場合や、相続によって所有者が複数人になっている場合などは、調整に時間がかかることもあります。
また、隣接地の所有者にとって、境界確認は必ずしも日常的に必要な手続きではありません。
こちらは農地転用を進めるために境界を明確にしたいと考えていても、隣接地の所有者からすれば、急いで対応する理由がない場合もあります。
そのような方々に事情を説明し、協力をお願いしながら進めていかなければなりません。
さらに、双方が認識している境界の位置に違いがある場合もあります。
その際には、一方の主張だけで判断するのではなく、過去の資料や現地の状況などを確認し、関係者の理解を得ながら慎重に進める必要があります。
境界について意見が対立している場合には、通常の測量や確認だけでは解決できず、別途、法的な対応などを検討しなければならないこともあります。
新潟では、夏の暑さや冬の寒さ、積雪など、屋外での作業に影響する気象条件にも配慮が必要です。
こうした事情を踏まえると、確定測量には、専門的な知識や測量技術だけでなく、関係者との調整力や粘り強さも求められることがわかります。
4.農地の一部だけを転用する場合は「分筆」が必要になることも
農地転用に関連する土地家屋調査士の業務として、もう一つ重要なのが分筆です。
分筆とは、登記簿上、一つの土地として扱われている土地を、複数の土地に分ける登記手続きです。
例えば、面積2,000平方メートルの農地のうち、300平方メートルだけを住宅用地に転用したい場合を考えてみましょう。
転用する部分を明確に区分する必要があり、土地の状況や計画によっては、分筆が必要になることがあります。
分筆を行うには、土地の境界や分ける範囲を確認し、必要な測量や図面の作成を進めることになります。
分筆が必要かどうかは、事前の確認が大切
農地の一部を転用するからといって、必ず分筆しなければならないわけではありません。
転用の内容や土地の状況、許可申請・届出の方法などによって取扱いが異なるため、事前に確認する必要があります。
また、分筆が必要となる場合、境界の確認や測量に時間がかかることもあります。
土地を購入して住宅を建てる予定がある場合や、農地の一部を駐車場にする計画がある場合には、契約や工事の日程だけでなく、分筆の必要性も早い段階で確認しておくと安心です。
農地転用の手続きを始めてから分筆が必要とわかると、当初予定していたスケジュールに影響する可能性があります。
5.農地転用が終わったら「地目変更登記」も確認しましょう
農地転用に関連する土地家屋調査士の業務として、地目変更登記もあります。
土地の地目とは、登記簿に記録されている土地の用途による区分です。例えば、田、畑、宅地、雑種地などがあります。
農地を転用して住宅を建築した場合や、駐車場などとして利用するようになった場合には、実際の土地の利用状況に応じて地目変更登記が必要になることがあります。
農地転用の許可を受けただけでは、地目は変わりません
ここで注意したいのは、農地転用の許可を受けたり、届出をしたりしただけで、登記簿上の地目が自動的に変更されるわけではないという点です。
例えば、登記簿上の地目が「畑」となっている土地について、農地転用の許可を受けて住宅を建築した場合、実際の利用状況に応じて地目変更登記を検討することになります。
ただし、許可や届出が完了した時点で、直ちに地目変更登記ができるとは限りません。実際に土地の利用状況が変わっているかどうかなど、登記の要件を確認する必要があります。
また、地目変更登記は、原則として地目に変更があった日から1か月以内に申請することとされています。
農地転用の手続きが終わった後も、登記簿の地目を確認し、必要な登記を忘れずに行いましょう。

6.農地転用では、測量・分筆・地目変更の費用と期間も考慮しましょう
農地転用を計画する際には、行政書士に依頼する申請手続きの費用だけでなく、必要に応じて土地家屋調査士に依頼する測量や登記の費用も考慮する必要があります。
例えば、次のような要素によって、土地家屋調査士の業務量や所要期間は変わります。
- 土地の面積や形状
- 境界標の有無
- 過去の測量図などの資料の有無
- 隣接地の所有者の人数や所在
- 道路・水路などの管理者との協議の必要性
- 分筆の有無や、分筆する土地の数
- 地目変更登記の必要性
境界が明確で、過去の資料も整っている土地と、境界が不明確で関係者との調整が必要な土地では、必要となる作業が大きく異なります。
そのため、農地転用に伴う測量や登記の費用・期間については、一律に判断することができません。
転用計画が決まった段階で、対象となる土地の資料や現地の状況を確認し、必要な作業と見積もりを把握しておくことが大切です。
7.農地転用は行政書士と土地家屋調査士の連携が重要です
農地転用では、農地法に基づく許可申請や届出だけでなく、土地の境界確認、分筆、地目変更などが必要になることがあります。
それぞれの業務には専門的な知識が必要となるため、農地転用の手続きを始める段階で、どのような手続きが必要になるのかを整理しておくことが重要です。
例えば、農地の一部を転用して住宅を建築する場合には、次のような流れが考えられます。
- 行政書士が農地転用の要件や申請方法を確認する
- 必要に応じて、土地家屋調査士が境界や測量資料を確認する
- 分筆が必要な場合は、測量・境界確認などを進める
- 農地法上の許可申請や届出を行う
- 転用後の土地の利用状況に応じて、必要な地目変更登記などを行う
実際の手順は土地の状況や申請内容によって異なりますが、早い段階で各専門家が連携することで、手続きの漏れやスケジュールの遅れを防ぎやすくなります。
当事務所では、土地家屋調査士事務所を併設しており、測量や登記も含めた手続き全体を見据えて対応しています。
新潟市および新潟市近郊で、農地を住宅用地や駐車場、資材置場などに転用したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
農地転用の許可や届出だけでなく、境界確認、分筆、地目変更など、土地の状況に応じて必要となる手続きを早めに確認しておくことをおすすめします。



