「農地に家を建てたいけれど、農地転用にはどのくらい時間がかかる?」
「農地を駐車場にしたい。いつから工事を始められる?」
「土地を購入して店舗を建てたいが、農地転用が終わるまで何か月かかる?」
農地を農地以外の用途に利用する場合、このような疑問を持つ方は少なくありません。
農地転用は、申請書を提出すればすぐに許可されるという手続きではありません。
農業委員会による確認・審査のほか、案件によっては都道府県などによる審査も行われます。
さらに、農用地区域内の農地であれば、農地転用の前に「農振除外」が必要になることもあります。
そのため、農地転用を考えている場合には、「許可申請をしてから何日かかるか」だけではなく、許可申請の準備から逆算してスケジュールを考えることが重要です。
今回は、農地転用の申請から許可までの一般的な流れと、時間がかかりやすいポイントについて、行政書士がわかりやすく解説します。
1.農地転用にはどのくらい時間がかかる?
結論からいうと、農地転用にかかる期間は、土地の場所や面積、転用目的、農地の種類、自治体の受付スケジュールなどによって大きく異なります。
そのため、「農地転用は必ず○日で終わる」と一律に考えることはできません。
例えば、新潟県では、農地転用許可申請は農地の所在する市町村の農業委員会に提出することとされています。許可権限が市町村に移譲されている地域もあります。
また、自治体によっては毎月の申請締切日や農業委員会総会の日程が決められています。
例えば見附市では、申請書の提出締切日、農業委員会総会、許可証交付の日程が設定されています。
したがって、実際のスケジュールを考えるときには、
事前調査・書類準備 → 申請 → 農業委員会の審査 → 許可
という一連の流れで考える必要があります。
2.農地転用の大まかな流れ
農地転用の一般的な流れは、次のようになります。
STEP1 土地の調査
↓
STEP2 転用計画の確認
↓
STEP3 必要書類・図面の準備
↓
STEP4 農地転用許可申請
↓
STEP5 農業委員会による審査・現地確認等
↓
STEP6 必要に応じて県などで審査
↓
STEP7 許可
↓
STEP8 許可後に工事等を開始
農地転用は、単純に申請書を提出するだけではありません。
申請前の調査や書類作成にも一定の時間がかかります。
3.STEP1 まずは農地の状況を調査する
最初に行うのが、転用しようとしている土地の調査です。
ここが非常に重要です。
例えば、
・農地法上の農地に該当するのか
・農用地区域に入っていないか
・どの農地区分に該当するのか
・市街化区域なのか
・土地改良区の区域に入っているか
・周辺の農地や水路との関係はどうなっているか
・都市計画法などの別の規制がないか
などを確認します。
農地転用では、農地の場所や性質によって許可の可能性や手続きが変わります。
農林水産省も、農地転用について農地の営農条件や市街化の状況によって区分し、優良農地ほど転用を厳しく制限する仕組みを設けています。
そのため、申請書を作る前の土地調査が非常に重要です。
4.STEP2 転用計画を具体的にする
次に、農地を転用して何をするのかを具体的にします。
例えば、
・住宅を建築する
・駐車場にする
・資材置場にする
・倉庫を建築する
・店舗を建築する
・太陽光発電設備を設置する
などです。
このとき、
「とりあえず農地を宅地にしたい」
という程度の計画ではなく、
「転用後にどのように土地を利用するのか」
を具体的にする必要があります。
建物を建築する場合には、建物の配置や駐車場、進入路、排水なども含めて計画を検討します。
5.STEP3 必要書類や図面を準備する
転用計画が決まったら、申請に必要な書類を準備します。
代表的なものとして、
・農地転用許可申請書
・土地の登記事項証明書
・公図
・位置図
・土地利用計画図
・建物の平面図等
・資金計画に関する資料
・権利関係を確認する資料
などがあります。
ただし、必要書類は案件によって異なります。
例えば農地を売買して転用する場合は農地法5条の許可申請となり、自己所有農地を自ら転用する場合とは手続きが異なります。農地法4条・5条の許可制度については、新潟県もそれぞれの申請書を案内しています。
また、自治体によって申請締切日なども異なるため、早めに確認することが重要です。
6.STEP4 農業委員会へ申請する
必要書類がそろったら、農地の所在する市町村の農業委員会へ申請します。
農地転用許可制度では、農業委員会が申請の受付・審査に関係し、案件によっては県などへ進達されます。新潟県が公表している手続きフローでも、市町村農業委員会から県へ進達し、県が許可を行い、その後農業委員会を通じて許可書が交付される流れが示されています。
ここで大切なのが、申請の締切日です。
自治体によっては、毎月一定の日を申請締切日として、その後の農業委員会総会で審査する仕組みになっています。
締切日に間に合わなければ、次回の受付・審査になるため、それだけスケジュールが後ろにずれることがあります。
7.STEP5 農業委員会による審査
申請後は、申請内容について審査が行われます。
例えば、
・転用目的は適切か
・転用する面積は適切か
・資金や信用は十分か
・周辺農地への影響はないか
・農業用水や排水に問題はないか
・他法令の許可を受けられる見込みがあるか
などが確認されます。
新潟県も、農地転用の一般基準として、事業の実現可能性、資力・信用、権利者の同意、他法令の許認可の見込み、周辺農地への被害防除などを審査項目として示しています。
必要に応じて、現地確認などが行われる場合もあります。
8.STEP6 県などによる審査
案件によっては、農業委員会での確認後、都道府県などへ申請書が送られ、さらに審査が行われます。
例えば新潟県の資料では、市町村農業委員会から県へ申請が進達され、県が許可・不許可を行う流れが示されています。一定規模以上の転用では、さらに農業会議への意見聴取や国との協議が関係する場合があります。
そのため、
農地の面積が大きい案件ほど、手続きに時間がかかる可能性がある
と考えておく必要があります。
9.標準的な処理期間はどのくらい?
自治体によって標準的な処理期間は異なります。
例えば長野県では、30アール以下の転用について、農業委員会による意見書の進達が申請書受理後3週間、知事等による許可処分が申請書・意見書受理後2週間という標準的な事務処理期間を示しています。
30アールを超える場合は、農業委員会が都道府県農業委員会ネットワーク機構へ意見を聴く場合があり、その場合は農業委員会からの進達まで4週間、許可処分まで2週間とされています。
ただし、これはあくまで行政側の標準的な処理期間です。
実際には、
・申請書類の補正
・追加資料の提出
・現地確認
・農業委員会の開催日
・他法令の許認可との調整
・農振除外の必要性
などによって、さらに時間がかかることがあります。
10.一番時間がかかるのは「申請後」とは限らない
農地転用について、
「申請してから許可が出るまでに何日かかるのか」
を気にされる方は多いのですが、実務上は申請前の準備に時間がかかるケースもあります。
例えば、
「農振除外が必要だった」
「土地改良区との調整が必要だった」
「排水計画を見直す必要があった」
「建物配置を変更する必要があった」
「必要な資金証明が準備できていなかった」
といった問題が申請前に見つかることがあります。
そのため、農地転用は、
「許可まで1か月」ではなく、「計画開始から許可までどのくらいかかるか」
という視点で考えることが大切です。
11.農振除外が必要な場合は、さらに時間がかかる
農地が農用地区域内にある場合には、農地転用の前に農振除外が必要になることがあります。
農用地区域内農地は、農地転用について原則不許可とされているためです。
この場合、
農振除外の手続き
↓
農地転用許可申請
という順番になることがあります。
そのため、通常の農地転用よりも長期間を見込む必要があります。
「来月から家を建てたい」といった短期間の予定がある場合には、かなり早い段階で土地の区域指定を確認しておく必要があります。
12.市街化区域の農地は「許可」ではなく「届出」の場合も
市街化区域内にある農地については、一定の場合、農地転用許可ではなく届出によって手続きを行います。
つまり、すべての農地転用が同じ期間で処理されるわけではありません。
市街化区域内の農地か、それ以外の農地かによっても手続きが変わります。
例えば自治体によっては、市街化区域内の農地転用届出について、許可申請とは別の受付スケジュールを設けています。
「農地だから必ず何か月もかかる」と考えるのではなく、まずその土地がどの区域にあるのかを確認することが重要です。
13.農地転用の許可が出るまで工事を始めてはいけない
非常に重要なのが、許可が必要な農地について、許可を受ける前に勝手に造成や建築を始めないことです。
例えば、
「許可が下りる予定だから、先に整地だけしておこう」
という考えは危険です。
農地転用の許可を受けずに農地を転用した場合、原状回復等の命令の対象となる場合があり、罰則の対象となることもあります。
工事を始める時期については、必ず許可の状況を確認しましょう。
14.農地転用のスケジュールは早めに相談する
農地転用を考えている方におすすめしたいのは、
「土地をどうするか決めてから行政書士に相談する」のではなく、「農地を転用したいと思った段階で相談する」
ことです。
例えば、
「半年後に住宅を建てたい」
「来年から駐車場として利用したい」
「農地を購入して事業用地にしたい」
という場合には、その時点で土地の状況を確認しておくことで、必要な手続きを早めに把握できます。
特に、
・農振除外
・土地改良区
・開発許可
・建築関係の手続き
・道路や水路に関する手続き
などが関係する場合には、農地転用だけを見てスケジュールを組むと、後から予定が大幅にずれる可能性があります。
15.まとめ|農地転用は「早めの確認」が重要
農地転用は、申請してすぐに許可されるものではありません。
一般的には、
①土地の調査
↓
②転用計画の作成
↓
③必要書類・図面の準備
↓
④農業委員会へ申請
↓
⑤農業委員会等による審査
↓
⑥必要に応じて県などによる審査
↓
⑦許可
↓
⑧許可後に工事等を開始
という流れになります。
ただし、実際にかかる期間は、農地の場所や面積、転用目的、区域指定、自治体の受付日程などによって変わります。
特に農用地区域内の農地で農振除外が必要な場合には、農地転用だけの期間ではなく、前段階の手続きも含めてスケジュールを考えなければなりません。
「いつまでに許可が必要なのか」が決まっている場合は、できるだけ早く農地の状況を確認することをおすすめします。
農地転用は、申請書を作ることよりも、最初の土地調査とスケジュール管理が重要です。
「この農地は転用できるのか?」
「いつ頃までに許可が取れそうなのか?」
「農振除外は必要なのか?」
「住宅や駐車場にするには、農地転用以外にどんな手続きが必要なのか?」
このような疑問がありましたら、行政書士などの専門家へ早めにご相談ください。



