行政書士の立場では、農地転用の許可が出ることがゴールという感覚があるので登記のことにはあまり関心がないということがあります。
農地転用と不動産の決済が連動しているような場合は、農地転用の届出書や許可書の記載に十分な注意が必要になります。
農地転用が絡む不動産売買の流れは以下のとおりです
農地に関する売買契約締結
↓
農地法5条の届出・許可申請
↓
不動産の残金決済
買主、売主、融資を行う金融機関、仲介業者(複数社の場合有)、司法書士
この決済には上記のように多くの方のスケジュールを調整して日程が決まっています。
決済日前や決済日当日に農地転用の届出書や許可書に不備が発覚すると決済自体ができず、延期ということになってしまうのです。
問題となる届出書・許可書の記載
譲受人が複数の場合に持分が異なる
たとえば農地法5条の届出書に
譲受人A3分の2
B3分の1
と記載されているが、登記申請の情報では
権利者A2分の1
B2分の1
という場合は、登記申請が受理されません。
持分の記載なし
農地法5条の届出書や許可書に譲受人が複数の場合の持分の記載がない場合であっても登記申請は受理されます。
売買なのに贈与で申請
農地法5条の届出書や許可書に移転の事由を「売買」として、登記申請を「贈与」として申請することはできない。
住所の変更
農地法の届出書や許可書の住所の記載が錯誤により相違している場合は、登記申請の前提として届出書・許可書の訂正が必要
農地法申請後に譲渡人の住所に変更があった場合は、届出書・許可書の訂正は不要
その他、農地法届出書・許可書と登記申請の論点
Q農地法5条の許可申請をしたが、許可前に売主が死亡した
A許可申請自体は有効。売主の相続人への相続登記をし、許可書を添付して相続人と買主から所有権移転登記申請を行う。
Q農地法3条の許可申請をしたが、許可前に買主が死亡した
A許可申請は無効。農地法3条の許可申請は買主が農地を取得する資格を有しているか否かに重点を置いているから。
⇒許可後死亡した場合は有効。なお、この場合、買主の相続人に直接所有権移転登記をすることはできない。
Q農地法の許可を得て取得したAB共有の農地について、持分更正登記の申請をするには農地法の許可書が必要か
A不要
Q農地法の許可を得てAに所有権移転登記後、AB共有に更正登記をするには農地法の許可書は必要か
A必要
Q農地法の許可書の譲受人はAB2名であるが、所有権移転登記申請はA単独名義でできるか
A申請は受理されない。